indeterminate colitis (ガストロ用語集 2023 「胃と腸」47巻5号より)

indeterminate colitis

 indeterminate colitisとは,潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis ; UC)とCrohn病(Crohn’s disease ; CD)の鑑別困難例である.CDとUC両疾患は,特異的な診断項目がなく,主に形態学的所見(びまん性罹患vs. skip lesion,縦走潰瘍,敷石像,広範なアフタ,小腸病変,肛門病変,上部消化管病変,狭窄,膿瘍など)や組織学的所見(粘膜主体の炎症,transmural inflammation,不釣合い炎症,patchy inflammation,非乾酪性類上皮細胞肉芽腫,など)によって診断される.しかも,両者の鑑別点は従来からあいまいな点が存在することが知られていた.

 indeterminate colitisは,当初は手術例の切除標本の組織学的検索によっても鑑別できない場合を指した1).その多くは,激しい潰瘍の存在によりUCあるいはCD特徴的な所見が得られないものが多かった.現在では,その概念が徐々に変化し,切除例のみならず,内視鏡所見や生検組織所見などの臨床的項目で鑑別できない場合も含まれるようになった2).すなわち,後にCDと確定するものでも当初はびまん性大腸炎を呈することがある(Fig. 1, 2)

Fig. 1 20 歳代,男性.
a  2000 年の発症初期の注腸X 線検査 ;上行結腸のびまん性炎症.

〔「松井敏幸 : Indeterminate colitis の概念,炎症性腸疾患鑑別診断アトラス(赤松泰次,斉藤裕輔,清水誠治編),p 24,2010,南江堂」より許諾を得て転載〕
Fig. 1 20 歳代,男性. a  2000 年の発症初期の注腸X 線検査 ;上行結腸のびまん性炎症. 〔「松井敏幸 : Indeterminate colitis の概念,炎症性腸疾患鑑別診断アトラス(赤松泰次,斉藤裕輔,清水誠治編),p 24,2010,南江堂」より許諾を得て転載〕

Fig. 1b  2000 年の発症初期の注腸X 線検査 ; 脾彎曲部のびまん性炎症.
Fig. 1b 2000 年の発症初期の注腸X 線検査 ; 脾彎曲部のびまん性炎症.

Fig. 1c 2006 年の横行結腸から上行結腸,びまん性炎症に加え敷石像あり.
Fig. 1c 2006 年の横行結腸から上行結腸,びまん性炎症に加え敷石像あり.

Fig. 1d 横行結腸から脾彎曲部には敷石像顕著.
Fig. 1d 横行結腸から脾彎曲部には敷石像顕著.